毎月のレギュラーレッスンでは、テーマを設定し、そのテーマを基にブーケづくりを楽しんでいただいています。
2025年1月のテーマは「ピアノの魔術師」と称されるリスト――ではなく、彼のファンである女性たちに焦点を当てました。
19世紀のサロン文化でリストはアイドル的な存在でした。彼の超絶技巧とドラマチックな音楽、そして魅力的なたたずまいに、多くの女性たちが心を奪われたといいます。その女性たちが身にまとっていたであろう華やかなドレスや、サロンの華やかな雰囲気をブーケで表現することを目指しました。
花材選びとデザインの工夫
今回使用した花材は、スイートピー、ラナンキュラス、ラナンキュラスラックス、パンジー、チューリップ、雪柳。
テーマである19世紀の女性ファッションを意識し、ピンクを基調にした配色でドレスのレースやフリルを思わせる柔らかな花材を選びました。
特に雪柳は、ほころび始めた蕾がまるでレースのパーツのように見え、ドレスを表現する上で欠かせない存在でした。雪柳の枝を一本ずつほぐし、他の花材と馴染ませることで、仕立てたばかりの優雅なドレスを思わせるブーケに仕上がりました。
ラナンキュラスやチューリップは、フリフリしたスイートピーやパンジー、ラナンキュラスラックスに埋もれすぎず、同系色と隣り合わないよう配置に注意しました。
葉っぱも工夫を凝らし、チューリップのカールした葉やラナンキュラスの小さな葉を活用することで、鮮やかなグリーンがブーケ全体にフレッシュさと奥行きを与えました。
レッスン歴による気づきと工夫
レッスンでは、学び始めて間もない方(レッスン歴約1年)と長年学んでいる方(レッスン歴約3年以上)で、雪柳の扱い方に違いが見られました。レッスン歴の浅い方は、太い枝の向きをあまり気にせず配置してしまい、ブーケの中心が花だけになり、全体の調和が欠けてしまうことがありました。
一方、レッスン歴の長い方は、枝を内向きに入れることでアウトラインを整えつつ、繊細な枝を際立たせるテクニックを発揮していました。
また、ネトワイエ(下処理)の段階で「可愛い葉っぱを活かす」ことに気づいた方もいました。取り除いてしまいがちな葉っぱの魅力に気づき、それをブーケのアクセントにすることが、完成度の高いブーケを作るポイントの一つだと感じたそうです。
このように、自分の感覚を大切にしながら花材と向き合う姿勢が、作品に個性を加えていました。
守破離とレッスンの哲学
レッスン中、ある生徒さんが「守破離」について話題に出しました。
「こんな感じで作りたい!」という思いが強く働き、思考やテクニックが追いつかない場面で、「ブーケは感覚で作るものですが、それにはテクニックが身についていないと思った通りの形にするのは難しい」とお話しした際、「それはまさに守破離ですね!」と共感の声が上がりました。
私自身、8歳から36歳まで長唄三味線のお稽古を続けてきた経験があります。そして、40歳でパリスタイルフラワーを学び始めてから、かれこれ15年が経ちます。その中で学んだ「基本を守る大切さ」や「自由な表現へと発展するプロセス」は、今のレッスンスタイルの基盤となっています。焦らずに繰り返し花に向き合う姿勢を大切にしながら、生徒の皆さんと一緒に花の新たな魅力を発見しその奥深さを感じていけたらと思っています。
音楽とブーケが織りなすひととき
レッスン中に流していたリストの音楽は、制作に直接影響を与えるだけでなく、無意識のうちに当時の華やかなサロン文化を感じさせる雰囲気を作り出していました。「この曲もリストなんですね!」と曲について話が弾む場面もあり、生徒さんたちにとって制作の楽しさの一部となっていました。
制作中は、集中するあまり真剣な表情になる生徒さんたちに「口角を上げてください!」と声をかけると、場が和らぎ、リラックスした笑顔が制作に良い影響を与えたように思います。笑顔になることで、作品にも柔らかさや楽しさが出てくるのですね。
次回レッスン「ブーケロン特訓」に向けて
完成したブーケは、花材の魅力が存分に活かされただけでなく、生徒一人ひとりの感性が光る仕上がりとなりました。
脇役である葉っぱを準主役級にする人、雪柳の曲がりの強い枝で動きを加える人など、それぞれの個性がブーケに表現されていました。
次回は毎年恒例のブーケロン特訓で、ブーケ作りの基本を再確認しながら、技術を磨く時間となります。今回のレッスンで得た気づきを実践に結びつけ、生徒さんそれぞれの感性をさらに深められる機会となれば嬉しいです。学びを積み重ね、確かな手応えを感じられる瞬間を楽しみにしています。
フラワーレッスンを初めてみたい方はトライアルレッスンをどうぞ
パリスタイルフラワーで私らしい仕事づくりを叶えたい!作品づくりとビジネスの基礎知識が学べるコースです。