朝の時間は刺繍アーティストさんと

この日は、朝から楽しみにしていたミーティング。
刺繍アーティストのImanaさんと、朝食をとりながらおしゃべり。
彼女の作品も生き方もとっても魅力的で、気づけばあっという間に時間が経っていました。
こうしてパリで、日本人アーティストと「今」を共有できるのって、特別な時間だなぁとしみじみ。
アートの話も人生の話も、まっすぐ届いてくる感じが心地よかったです。
その後は音楽博物館へ

午前の余韻を抱えたまま、私は音楽博物館(Musée de la musique)へ。
ここは世界中の楽器や音楽の歴史が集まる場所で、楽器好きにはたまらない空間。
この日はちょうどラヴェルの特別展もやっていて、彼の世界観を大きな映像とともに体感することができました。
でも、本当に心を掴まれたのは、そのあと。
音が導いてくれた不思議な再会

常設展示をふらふらと歩いていたとき。
どこからともなく、懐かしい音色が聴こえてきました。
え?この音……なんか、知ってる。
気づいたら、足が勝手に音のする方へ。
なんだかちょっと興奮していて、心臓の鼓動も早くなっています。
近づくにつれて、私の口から自然とメロディがこぼれているじゃないですか。
え?え?これって、長唄三味線の「松の緑」!?
私が子どもの頃から何百回も弾いた、三味線の基本中の基本のような曲。
まさかパリで、生演奏で聴くことになるなんて!
パリで三味線!?しかも生演奏!
音の元をたどると、そこには日本人の女性奏者が。
パフォーマンスエリアで、堂々と三味線の弾き唄いをしていました。

その姿が、とても凛々しくて!
音も、空気も、全部が彼女のものになっているようでした。
聴き入っているうちに、小学生のグループがガヤガヤとやってきて、
急遽その場で三味線のワークショップが始まった!すごい展開!
でも、その即興対応がまた素晴らしくて。
初めて三味線を目にする子どもたちに寄り添いながら、空気を和ませ、音でひとつにしていく。
まさに、プロフェッショナルの仕事でした。
日本の伝統芸能をパリで伝えてくれる人
演奏が落ち着いた頃、もう一度彼女の元へ。
少しだけお話を聞かせてもらったら、
なんと10年ほど前から、この博物館で定期的に演奏されているとのこと。
パリを拠点に、日本の伝統芸能や民族音楽を伝え続けているのだそう。
海外で、たった一人でこうやって活動されているその姿に、
私はもう、誇りと尊敬と感動で胸がいっぱいになりました。
私は何ができるんだろう?
外国で活動している方を目にして、こんな思いが湧いてきました。
「日本にいる私たちが、自分の中にあることを通じて、外の世界とどうつながれるだろう?」
花で何を届けたいんだろう。
どんな風に伝えていきたいんだろう。
そんな問いが、自然と浮かんできたのです。
心のままに動いたら、思いがけない出会いがあった
この日のことは、何ひとつ予定していませんでした。
でも「なんとなく行ってみよう」と心が動いたから、音楽博物館に足を運んだ。
そうしたら、まさかの「松の緑」再会劇。
自分のルーツともいえる三味線と、パリで再び出会うなんて…
やっぱり、心のままに動くってすごい。
何かを決めすぎずに、心の声に従って動いてみる。
そんなパリの過ごし方が、今の私にはしっくりきています。


