ジャコメッティーの線に教えられた、「表現していい」という感覚

この日は、ずっと楽しみにしていた「ジャコメッティー・インスティチュート」へ。
静かな住宅街にひっそり佇むその美術館は、旅の中でふと立ち止まりたくなるような場所でした。

目次

偶然から始まった、一目惚れの出会い

ジャコメッティーを知ったのは20代の頃。
ニューヨークを旅した際に訪れた近代美術館MOMAで、たまたま見かけた展覧会がきっかけでした。
華奢なのに力強いフォルム。シンプルなようで、内側にぎゅっと詰まった存在感。
「なに、この世界観?」
あの衝撃が、ずっと私の中に残っています。

「行ってよかった」と思える場所

今回、ジャコメッティー・インスティチュートを訪れるきっかけをくれたのは、私たちよりも一足早くパリを旅していた韓国人の友人の一言。
「すごく良かったから、ぜひ行ってみて」
その言葉に背中を押されて、迷わずスケジュールに組み込みました。

現地はこぢんまりとして静かな美術館。
スタッフの方も優しくて、私が手にしていた知人の手作りのトートバッグを「素敵なバッグね。」と言ってくれたり、最初はむすっとしていた男性スタッフが、ふと質問すると熱く語ってくれて……最後にはすっかり印象が変わったという。
館内全体が穏やかな雰囲気に包まれていました。

線のゆらぎが教えてくれたこと

展示では、鉄の彫刻作品やスケッチ、アトリエの再現などが並び、ジャコメッティーの創作の裏側が垣間見ることができます。

特に印象に残ったのは、数多くのドローイング。
その多くは、幼稚園児のお絵かきのようなもので、決して“上手”とは思えない。
でも、そこには迷いのない線と、心のままに描かれたエネルギーがありました。

「上手く描かなくていい」
「誰かのためじゃなく、自分のために描いていい」
そんな声が、自分の中からふっと湧いてきました。

私は、ブーケのデザインを描くときに、誰に見せるわけでもないのに「ちゃんとしなきゃ」といつも思ってしまいます。
だけど、本来“表現”って、もっと自由で、感覚的なもの。
頭の中にあるものを、自分が分かる形にするだけだし。
ジャコメッティーの絵を見て、ほんの少しだけ「私の、あの絵でもいいんだ」って思えて、気持ちが軽くなりました。

美しさは、相反するものの中にある

ジャコメッティーの作品が置かれた空間そのものも、とても印象的でした。
白と黒のコントラスト、澄んだ空気、鉄の彫刻の冷たさの中にある温もり。

硬さとやわらかさ。
孤独と存在。
光と影。
相反するものが共存することで、むしろ美しさが際立つ。

そんな空間に身を置いていると、
「私が心地よいと感じる世界って、こういうバランスなんだ」
と腑に落ちるものがありました。

自分の感覚を信じるということ

旅の中で、こんなふうに感性が震える時間が持てるのは、本当にしあわせ。
そして、20代の頃に感じた衝撃と、今の私が感じた安堵や気づきが繋がったような、不思議な一日でした。

表現は、誰かに評価されるためのものではなく、もっと自由で、自分の内側とつながる行為。
そう思えたことで、これまでかかっていたブレーキが、少し外れたような気がします。

どんなに時が経っても、自分の中にある「好き」の感覚は、ちゃんと覚えていてくれる。
だからこれからも、自分の感覚を信じて、一つひとつを丁寧に表現していきたいと思います。

フラワー教室開業 ビジネスの仕組み作りとweb集客で売れるスクールへ 東京 世田谷 KOLME(コルメ)

初心者さんでも楽しくナチュラルでシックなパリスタイルブーケが作れる、体験レッスンです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

KOLME姉。東京都出身。幼い頃より日本舞踊から茶道、華道を習い、日本の伝統美に触れる元・三味線奏者のパリスタイルフラワーアーティスト。責任感が強く面倒見の良い親分気質、思い立ったら即行動の情熱家。好きなものは、美容・宝塚・JALマイル計算。

目次