5月のローマ滞在中に、どうしても訪れてみたかった場所がありました。
それが「ヴィラ・メディチ(Villa Medici)」。
旅行準備中、友人に「Kazukoちゃん好みだと思う」と勧められていて、
調べれば調べるほど、その背景に惹かれ、期待を胸に訪れました。
ここは、ルネサンス期に芸術家を支援していたメディチ家が建てた別荘。
その後、19世紀にナポレオン3世によってフランスのものとなり、
今ではフランス政府の文化機関として、若手アーティストたちにローマで創作できる機会を提供しています。
「完成」ではなく、「探求の途中」が見える空間

整えられた庭園や重厚な建築も印象的でしたが、
もっとも心を動かされたのは、この場所が今も生きている創作の場だということ。
庭に点在するアトリエのような小屋、展示された作品のいくつかは、どこか未完成で、思考の途中経過のように感じられました。
それが逆にリアルで、まさに「今、創造している場所」だと実感させてくれるのです。
アカデミーのようなわさわさ感と、時空を越えるような体感

ヴィラ・メディチは博物館でありながら、どこかアカデミーのような日常の空気感が漂っていて、それがとても心地よかった。
観光スポットというより、誰かが暮らし、創作している場所にちょっとお邪魔しているような、親密さとわさわさ感がある。
その空気に自然と馴染んでいくうちに、自分が空間の一部になったような感覚さえ覚えました。
まるでルネサンス期にタイムトリップして、自分も創作の日々を送っているような、不思議な気持ちにさえなりました。
正直、「ここで半年ぐらい暮らせたらどんなに幸せだろう」と思ったくらい!
若手アーティストたちが、この場所で日常として創作を続けていることが、ただただ羨ましかったです。
壊して、問い直して、また創る

この「未完成の美」という感覚は、コルメのレッスンにも通じるものがあります。
私たちの花のレッスンも、ただ完成形を作ることが目的ではありません。
既存の型を学びながら、ときに壊し、問い直し、新しい自分の表現へとつなげていく。
ルネサンスという言葉には「再生」「復興」という意味がありますが、
私にとってそれは、「一度壊して、また創り直す」という自由で創造的な姿勢を表しているように思えます。
花とともに、自分自身を問い直すレッスンを

ヴィラ・メディチで出会った創造の場は、コルメのレッスンが目指している世界ともどこか重なります。
花を通じて感性をひらき、
ときには迷いながら、自分の“好き”を深めていく。
それは、美しさを形にするだけでなく、自分の内側にある答えに触れていく旅でもあるのです。
芸術も、人生も、完成形よりも過程にこそ深みがある。
ヴィラ・メディチで感じたそんな創造の哲学を胸に、
これからも花とともに、自分だけの表現を育てていきたいと思います。