ときめきをブーケに束ねる 〜花と共に歩む、豊かな人生〜– 花が変えたKazukoの暮らし –

パリの街を歩いていると、ふと目に留まる花束があります。
特別なしつらえでもないのに、なんだかホッとする。
でも洗練されている。
そんなパリの花屋さんが作る花束の美しさに心を奪われたのがフラワースクールKOLME主宰者のKazukoさんです。

40歳にして、三味線奏者からまったく異なるフラワーアレンジメントの世界に飛び込んだKazukoさんに、花と一緒に生きることの楽しさや、花から教わった美しさについて伺いました。

―― パリスタイルのフラワーアレンジメントとの出会いについて教えて下さい。

Kazuko:
もともと子供の頃から花に興味があり、花と向き合う時間が好きでした。

フラワーアレンジメントには本当にさまざまなスタイルがあって、小学生頃からいろいろなスタイルを見ていたものの、ピンと来るものにはずっと出会えなかったんです。

でも、セレクトショップを始めて、店頭で扱うミニブーケを自分で作りたいとインターネットで検索していたところ出会ったのが、パリスタイルのブーケです。
見た瞬間、「私が探し求めていたスタイルは、これだ!」と思いました。

自然なおもむきがあるのに、品があって美しい。
草花が持つ優しさと、都会的で洗練された空気感が同居している感じ。
一目惚れという言葉がぴったりでした。

習い始めると夢中になって、ブーケを作る喜びにどんどん引き込まれていきました。

―― そんなに夢中になれたのはどうしてだと思いますか?

Kazuko:
パリスタイルって面白くて、花だけでなく枝や葉っぱも贅沢に使うんです。
まるで、自然の風景を切り取るみたいに。

たとえば、ユーカリの無垢な枝ぶりに、優美なバラや愛らしいスカビオサを組み合わせてみる。
すると、自然なのに繊細でスタイリッシュな空気感が生まれます。

私はヨーロッパ留学中にフランス人と同居していたこともあって現地の知り合いも多いのですが、彼らは人目をあまり気にせず、自分らしくあることを何より大切にしているんです。

以前から、そういった姿勢が素敵だなと思っていました。

パリスタイルのブーケも、そんなイメージ。
花も葉も、みんなそれぞれの個性を活かしながら、でも全体として見た時に、ちゃんと調和している。
そうしたところに魅力を感じました。

パリスタイルやフラワーアレンジメントについて理解を深めていくうちに、気づいたことがありました。

ブーケで、目には見えない「癒やし」や「温もり」さえ形にできるんだって。

その感動が、私の中でどんどん大きくなり、
「私も自分の感性が求めるままにブーケを作ってみたい!」
「自分の世界観を花で表現してみたい!」
と思うようになったんです。

―― 三味線奏者から花の世界へ。まるで違う道を選んだ時、どんな気持ちでしたか?

Kazuko:
三味線は8歳から習っていて、周りからの評価もいただいていたんです。
でも、自分の意思ではなかったので、「やって当たり前」のもの。

それに比べてフラワーアレンジは、人生で初めて「やりたい!」と心の底から思えたものでした。
だから、すべてが楽しくて。

もちろん最初は、思い通りになりませんでしたが、不思議と、「できない私」もつらいけれど楽しめる、という感じでしたね。

パリの花屋さん『Arôm Paris』でブーケを束ねてもらいました

―― 実際に花を束ねている時は、どんな感覚ですか?

Kazuko:
花材って、一つ一つが本当に美しいんです。
だから束ねている時、もうずっとときめいていて。

「なんて可愛いんだろう」って感動しながら、手を動かしています。
「あ、もっと可愛い花が来ちゃった!」
「この葉っぱの形も面白い!」
「あぁ、どうしよう!」って。

私は、主張の強い枝や変わった形の葉っぱが大好きなんですね。
そういう花材を組み合わせる時など、もう最高です。

「お、やんちゃな子が来た」
「さあ、どうやって他の子と仲良くさせようかな」

まるで物語を紡ぐみたいに束ねていく。
素敵なパズルを組み立てているような、そんなワクワク感があります。

―― パズルとは、面白い言い方ですね。

Kazuko:
実は私、絵を描くのが苦手なんです。
でも花って、それ自体がアートでしょう?
だから組み合わせるだけで、アート作品になる。
花材さえあれば、自分の思い描く世界が作れる。

アレンジメントを習い始めた時、そこにすごく感動しました。

時には、大好きな宝塚になぞらえて、「この子は宝塚のトップスターで、この子は2番手で……」と想像しながら束ねることも。

トップはトップなりの、2番手は2番手なりの魅力がある。
だから舞台のキャスティングみたいに、それぞれの持ち味を引き立て合うように、組み立てていくんです。

―― 花と向き合う時間は、Kazukoさんにとって特別な時間なんですね。

Kazuko:
そうなんです!
花を束ねる時間が、もう本当に愛おしくて。
“幸せマックス”な気持ちになります。
一瞬一瞬が貴重で、かけがえのない時間です。

でも、花の可愛さに見とれているだけではいつまでたってもブーケは完成しないので(笑)
直感とテクニックを駆使して、花材が一番美しく見える角度を探していきます。

目で見るのはもちろん、茎を束ねる左手の感覚など、五感をすべて使って、花との対話を楽しみながら作品を作っていくんです。

―― ブーケを作る時の幸せな気持ちが伝わってきます。

Kazuko:
不思議なことに、この幸福感って、あとから何度でも思い出せるんです。
そのたびに「あぁ、あの時は楽しかったな」と、また幸せな気持ちになれる。

印象に残るブーケは、今でもはっきり覚えていますよ。
「あのブーケは特別だったな」とか「我ながら、すごいの作っちゃったな」って。
思い出すたびにキュンとして、一つのブーケで何度も心が躍ります。

ブーケを作ることを想像するだけで、いつでもハッピーになれる…。
ちょっと変かもしれませんね(笑)
でも、そんな体験ができることに幸せを感じています。

―― 何度も思い出して楽しめるとは意外でした。そんなふうに感動できるって素敵ですね。

Kazuko:
素晴らしい演奏会や舞台も、必ず終わる時が来ますよね。
でも、その瞬間は思い切り楽しめるし、感動の余韻や高揚感は、いつまでも心に残る。
そういう凝縮された時間はプライスレスだし、永遠です。

花と向き合う時間も、まったく同じ。
何度でも感動を呼び起こせる、特別な瞬間。
誰にでも、宝物のような大切な思い出があると思いますが、私にとってブーケを作る時間は、まさにそれなんです。

―― 完成したブーケと一緒に過ごす日々について、教えて下さい。

Kazuko:
花があるだけで心が明るくなるし、気分が上がります。
特に自分で作った作品には愛着が湧いて、まるで分身か、大切なペットみたいに可愛いから、水換えなどのお手入れも苦になりません。

花たちが日々変化していく姿を見るのも楽しいんですよ。
枯れていく様子さえ美しくて、心癒される豊かさを感じます。

――花が枯れる姿にも美しさがあるのですね!興味深い視点です。

Kazuko:
普通は、咲き始めや満開の時が一番きれいだと思いますよね。
枯れたりしおれたりする姿は、美しくないと思われがちです。

でも、花って命があるもの。
だから、必ず枯れていきます。

みずみずしく咲き誇っていた花が、だんだん生気を失って、次第に色褪せていく。
その姿に、グッと心を打たれるんです。

特に、葉っぱや枝の変化に魅了されます。
青々とした新芽が成長して深緑になり、やがて赤や茶色に変わって、最後は枯れ落ちる。
花も一緒にしおれていくそのプロセスに美を感じます。

―― なるほど。そんな見方もあるんですね

Kazuko:
これって、人間も同じだと思うんです。

私は、アンチエイジングという言葉が、あまり好きではないんです。
もちろん、若さを保とうとする姿勢を否定するわけではありません。
若さの持つ生命力や美しさは素晴らしいし、若かった頃の自分を取り戻そうと焦ってジタバタすることだってありますよね。

でも、”その先の美しさ”があるはず。
年齢による変化を受け入れて、いかに味わい深く成熟していくか。
いかに味のある”枯れ方”ができるか。

そう考えて、楽しんだり工夫したりしてみたら、人生はもっと豊かになると思います。

―― 確かに!そういう視点を持つと、年を重ねることが楽しくなりそうです。

Kazuko:
ほら、アンティークの家具やワイン、チーズなど、時を経て価値が増すものって、たくさんありますよね。

人間も同じです。
自分らしい時間を重ねることで味わいが増していく。
そう考えると、自分の人生も違った角度で見られるような気がします。

私も、訪れる変化に寄り添いながら、新しい自分との出会いを楽しみたいなと思います。
そうすることで、より充実した幸せな毎日を過ごせるんじゃないかな。

花との暮らしの中で、そんなことを考えるようになりました。

―― 花との出会いで、Kazukoさんの人生はどう変わりましたか?

Kazuko:
楽しいこと探しが、得意になりました。
以前から、やりたいことは必ずやってきたし、楽しく生きてきたつもりです。
でも、ここまで楽観的じゃなかったかも。

花に触れていると、日々の悩みが軽くなって、前向きな自分を取り戻せるんです。
「なんだか調子が出ないな」という時も、「楽しくない自分」を楽しめるように。

花と触れ合ううちに、自然の摂理というか、変化を受け入れることを学んだのかもしれません。
花のおかげで、人生がより輝きを増しました。

―― これからの夢を聞かせて下さい。

Kazuko:
たくさんありますよ!

花に関して言えば、パリスタイルと日本の美意識を
ひとつにした新しい表現を探してみたいと思っています。
シックな色使いや個性的な花材も取り入れて、KOLMEならではの日本発の美しさを表現していきたいですね。

今も私は、作品ごとにテーマを持ち、それを軸に、物語を紡ぐように花を束ねていますが、これからはその楽しさをより多くの人に伝え、広げていきたいです。

たとえば、日常の中で自分の表現したいテーマを見つけ、それをブーケという形にしていくことで、誰もがアートに触れるような体験ができるんです。

そういった体験を皆さんに提供できたらと考えています。

銀座にKOLMEの店舗を構えることも夢のひとつです。

フラワースクールの枠を超え、
花だけでなく音楽やアートなど、五感を満たす体験が待つ特別なサロンを創れたら嬉しいですね。

訪れるたびに心が明るくなり、新しいひらめきと元気を持ち帰れる場所。
美しさと花の魅力があふれる空間で、Kazukoと過ごす特別な時間が待つ空間を夢見ています。

美しく、 真剣に。
それでいて、 自由に、 軽やかに。

真剣に美を追求しながらも、自由で軽やかな発想を忘れない。
それが私の精神です。

花との対話を通じて、日々に豊かさと美しさを感じられる時間をお届けしたいと考えています。

小さな喜びが人生に大きな変化をもたらすように、心のときめきと洗練された創造性を忘れず、誠実に歩み続けていきます。